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2006年4月10日
趣味人の家 File09 オーディオルームのある家
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大音量を思う存分楽しめる オーディオルームのある家
防音室には窓がなく、照明は落ち着いた灯りのダウンライトが2つあるだけ。2重になったドアを閉めれば、そこは外界から完璧に遮断されたプライベートルーム。ソファベッドで寝そべるのも楽しみ。
ロッカーの魂が息づくオーディオルーム
プロジェクター
 上田さんが、建築家としての独立第一歩を踏み出したときに設計した、オフィス兼作品例としての自宅。設計時に欠かせなかったのが趣味を楽しむスペースだ。上田邸には、音響映像設備を施した無窓の閉ざされた防音室と、陽の光が優しく降り注ぐ開放的な住居空間が違和感なく収まっている。この絶妙なバランスは、趣味人の建築家がこだわり抜いた住まいの形といえる。
 
プロジェクターは、液晶よりも黒が締まって見えるプラズマの「Piano」を使用。壁に直接投影してどの角度からでも眺められる安定した映像を楽しむ。コーヒーを飲みながら音楽に包まれるときが至福の瞬間。
 音楽、映画、読書、写真、絵画など、幅広いジャンルの趣味を持つ上田知正さん。「仕事と趣味の境が、自分の中であいまいなんですよ」というその職業は一級建築士。自宅と兼ねたオフィスを構え、施主の意向を取り入れた住宅の設計を数多く手掛けている。

 設計事務所に勤めていた頃の住まいは東京・世田谷区の賃貸マンション。好きなロックはヘッドフォンで聴き、ドラムを担当するバンドの練習は貸しスタジオを利用していた。「独立をきっかけに、音楽が思い切り楽しめ、建築家としての作品例にもなる鉄骨造の戸建てを新築しようと決めました。予算を考えるとくせのある土地を購入せざるを得ませんでしたが、要は“その土地の要求”に沿った設計をすればいいだけのことなんです」

 高台の斜面に位置し、間口が約18m、奥行きがたった4mという細長い台形の土地という特徴をふまえ、各階を用途別に分ける3層構造のフロアゾーニングを採用。1階は吹き抜けのリビング。そしてキッチン、バスルームなどのユーティリティー。2階は上田さん、奥様、小学校1年生の長女それぞれの個室。そして当初はドラムの練習と暗室作業のためにつくられたというRC構造の防音室を、オフィスとともにエントランスがある半地下に配置した。

 また、建物全体に北側壁面はふんだんに窓ガラスを設置。太陽光が強すぎない北向きの立地を逆手にとって、憧れだった“優しい陽の光が差し込む画家のアトリエ風”をイメージした空間を手に入れたのである。
高台の斜面に位置する上田邸
高台の斜面に位置する上田邸。遠くからでも壁一面に施されたガラス窓がキラキラ反射して見える。公道からは約20m奥まった場所にあり、手前の階段を昇ると、実際の土地より一段低く設けたエントランスにたどり着ける。
優しい光が差し込むアトリエのような空間
吹き抜けのリビングの片側全面を書棚にして、膨大な書籍を収納している。年月を経て焼けてしまっていた背表紙の色が、ここではかえって白いインテリアにマッチしているのが面白い。
 映画や音楽を防音室で楽しむ際、まずは遮音性能が大切である。打楽器を演奏する上田さんが取り入れたのは、2重構造の浮き壁。200mm厚のコンクリート壁に留めたゴム絶縁アンカー下地にプラスターボード、2重の遮音ゴムシート、さらにプラスターボードを重ね、クロスで仕上げてある。下地の隙間には高密度吸音材が充填されている。
「土地の変形も生かした台形の部屋は、音場にも好環境をつくります。この仕組みなら、専門業者に頼むよりも、はるかに低価格で防音室を造ることが可能です。それに防音された部屋は多目的。熟睡できる寝室として利用したり、何かと便利なんです」。

 プロジェクターを手に入れてからは、ミュージックDVDや映画などを壁一面に投影して趣味の世界に浸っている。長年のロックファンの上田さん、これまでクラシックやジャズを好む奥様とは音楽の趣味が一致しなかったが、最近では2人ともにオルタナティブロックがお気に入りで、ライブ映像を一緒に楽しむのだとか。もちろん家族3人で映画を観る団欒のひとときも大切にしている。
 オフィスを訪ねてくる施主の中には、上田邸に感化され自分も欲しくなる人もいるとのこと。防音&音響効果が身をもって体感できる、ショールーム的な役割をも担う、まさに“多目的”ルームとしても活躍中だ。
エントランスを入って左手がオフィス
エントランスを入って左手がオフィス。半地下といっても採光にまったく問題はなく、大きな窓が十分に開放的な雰囲気をもたらしている。
明るいバスルーム オフィスの窓は手動で開閉
まるで南国のリゾート地にいるかのように明るいバスルーム。隣りのテラスは洗濯物干し場として大活躍。
リビングの窓は電動式だが、オフィスの窓は手動で開閉。実はこの窓ガラス、上田さんが花屋で見かけて気に入った温室用のサッシュを取り入れた。
House Data
敷地面積/50.8坪
延床面積/46.2坪
築年数/3年9ヶ月
家族構成/御夫婦+子供1人
構造/鉄骨造、一部RC造
キッチン 長女の部屋 廊下左手の収納スペース
リビングとつながるキッチンにも、溢れんばかりに光が降り注ぐ。「遊びに来たお友達も『帰りたくないわ』なんて言ってくれるんですよ」と奥様。しかし白いビニールタイルの床はメンテナンスが結構大変なのだとか。
「小さくてもいいから、家族1人ひとりの個室をつくろうと決めてました」とご夫婦。幅2mの各部屋にはベッドと収納が設けられている。長女の部屋には本棚も設置。毎日朝日とともに目が覚める健康的な生活。
半地下のフロアかららせん階段を昇ると、上階の風通しの良いメッシュの廊下が見える。限られたスペースを有効に使うため、ドアなどの建具はできる限り省略した。廊下左手は収納スペースとして活用している。
Message from Owner
防音室を設置するにはかなり費用がかかると思われがちですが、新築の際に組み込むのであればそれ程でもありません。どこにコストをかけ、どこを削るか。自分の中で優先順位を設け、それを専門知識のある設計者にしっかり伝えることが必要だと思います。
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